平鹿町金屋地区は、広大な田園地帯の一角にある80軒ほどの地域です。少し歩くと鳥海山の優美な姿が望めます。金屋麹屋は、ここ金屋地区で明治初頭が創業と伝えられるこうじ屋さんです。現在で12代目となる主人の佐々木朗さんは、元々は地域のこうじ作りを一手に引き受けていたところから始まったと思われるが、正確な資料が残っていないので分からないと語ってくれました。
まず始めに味噌作りのこだわりについてお話をうかがいました。
豆は秋田県産のリュウホウ、米は秋田県産のあきたこまち。原材料は他と変わりなくとも、ひとつひとつの工程に驚かされます。
糀は、生き物であり、まるで子どもを育てるように糀の声を聞くと言います。機嫌が悪ければ、どういうふうにしてほしいかを訊ねます。豆を煮るにもかすかな炊き上げりの匂いで僅かに時間をずらすなどの調整が必要だと言います。そうすることによってできる良質の糀と良質の大豆。そして、時間を積み重ねることによって、ここにしかない味噌を造りあげています。

現在、金屋麹屋さんが味噌作りを依頼されている顧客は350～500軒ほどだそうです。持ち込まれる米も品質がそれぞれ異なることから製造方法も変えざるを得ないと言います。また、糀の発酵度合いを変えるため、糀をいくつかの山のように盛って、表面積を変えるなどの方法も教えていただきました。
糀作りで最も神経を使うのが、発酵の度合いの見極めだそうです。
それがハゼ込み（糀の菌糸が米の中心に向かって伸びている状態）と言い、日々天候や気温、原材料の品質によって左右される、と話してくれました。このハゼ込み具合によって良質なこうじかどうかが決まるとも話してくれました。